「今はエックスサーバーを使っているが、料金プランや管理画面の都合でさくらインターネットに移したい」。新潟の事業者さまからも、こうした乗り換えのご相談が増えています。サーバー移管は手順を一つずつ確認しながら進めれば難しくありませんが、順番を間違えるとサイトが数時間止まったり、メールが受信できなくなったりします。
本記事では、エックスサーバーからさくらへ移管する流れを、事前準備からWordPressのデータ移行、独自SSLの再設定、DNS切り替え、メール移行、切替後の確認まで解説します。読み終えるころには、必要な作業とつまずきやすい箇所が具体的にイメージできる状態になります。特定のサービスを持ち上げる意図はなく、「安全に、止めずに移す」ことを軸に説明します。
移管の全体像をつかむ
サーバー移管は、大きく次の4フェーズに分かれます。
- 事前準備(現サーバーの棚卸しとバックアップ)
- 移管先(さくら)の契約と初期設定
- データ・データベース・メールの移行
- DNS切り替えと切替後の確認
最も事故が起きやすいのは4番目のDNS切り替えです。「先にデータを完全に移してから、最後にDNSを切り替える」という順番を守るだけで、トラブルの大半は防げます。
作業前に、エックスサーバー側の契約更新日も確認しておきます。契約がすぐ切れる状態だと作業途中でサーバーが停止し、元データを取り出せなくなる恐れがあります。移管完了後、数日〜1週間ほど動作を見届けるまでは現サーバーの契約を残しておくのが安全です。
事前準備:現サーバーの棚卸しとバックアップ
移管の成否は、この事前準備でほぼ決まります。急がず、抜け漏れなく現状を把握します。
サイトデータとデータベースのバックアップ
まず、現在サイトを構成しているファイル一式とデータベースを手元に控えます。
- エックスサーバーのファイルマネージャーまたはFTPで、公開ディレクトリ(多くは
public_html配下)のファイルをすべてダウンロードする - WordPressサイトの場合は、サーバーパネルの「MySQL」からphpMyAdminを開き、該当データベースをエクスポート(SQL形式でダウンロード)する
- ダウンロードしたファイルとSQLは、日付を付けたフォルダにまとめて保管する
バックアップは万一の保険であると同時に、そのまま移行用の素材にもなります。
ドメインとDNSの現状確認
次に、ドメインがどこで管理され、DNSがどこを向いているかを確認します。ここを取り違えると、後のDNS切り替えで迷います。
- ドメインの管理業者(レジストラ)はどこか(エックスサーバー内か、別のドメイン業者か)
- 現在のネームサーバーは何を指しているか
- 独自ドメインメールを使っている場合、MXレコードはどのサーバーを向いているか
ドメイン管理画面で、ネームサーバーの値をメモしておきます。DNS反映には時間がかかるため、この段階での正確な把握が後で効いてきます。
メールアカウントの棚卸し
見落とされがちなのがメールです。独自ドメインでメールを運用している場合、サーバーを移すとメール設定も作り直しになります。
- 現サーバーで使っている全メールアドレスを一覧化する
- 各アドレスの用途(担当者、フォーム通知、外部サービス連携など)を書き出す
- 受信方式がPOPかIMAPかを確認する(IMAPはサーバー上にメールが残るため、移行時に取りこぼしやすい)
過去メールを残したい場合は、切替前にメールソフトのローカル保存やエクスポートで手元へ退避しておきます。
さくらインターネット側の契約と初期設定
現状把握ができたら、移管先の準備に進みます。
- さくらのレンタルサーバーで、必要なスペックのプランを申し込む
- コントロールパネルにログインし、初期ドメイン(
○○.sakura.ne.jp形式)が使えることを確認する - 移管したい独自ドメインを「ドメイン/SSL」設定で追加する(この時点ではまだDNSは切り替えない)
- 公開フォルダの割り当てを確認する
ここで重要なのは、独自ドメインをさくら側に登録しても、DNSを切り替えるまでは実際のアクセスは現サーバー(エックスサーバー)に届き続ける点です。つまりDNS切替前なら、さくら側で自由に構築・テストしても公開中のサイトには影響しません。この「並行して作れる期間」を最大限に活用します。
WordPressのデータ・データベース移行
WordPressサイトを例に、具体的な移行手順を説明します。静的なHTMLサイトの場合は、ファイルをアップロードするだけで済むため、この節は読み飛ばして構いません。
ファイルとデータベースの取り込み
- さくら側でMySQLデータベースを新規作成し、データベース名・ユーザー名・パスワード・ホスト名を控える
- さくらのphpMyAdminを開き、事前にエクスポートしたSQLファイルをインポートする
- FTPで、現サーバーからダウンロードしたWordPress一式を、さくらの公開フォルダへアップロードする
wp-config.php の書き換え
WordPressはデータベースへの接続情報を wp-config.php に保持しています。サーバーが変わればこの情報も変わるため、書き換えが必須です。
DB_NAME:さくらで作成したデータベース名DB_USER:さくらのデータベースユーザー名DB_PASSWORD:そのパスワードDB_HOST:さくらが指定するデータベースホスト名(localhostではなく専用ホスト名の場合が多い)
この4項目が正しくないと、切替後に「データベース接続確立エラー」が表示されます。ホスト名の指定ミスは特に多いので、コントロールパネルの表示と一字一句照合します。
URLの置換と動作確認
DNS切替前にさくら側の表示を確認したい場合は、作業用PCの hosts ファイルに「さくらのIPアドレス+独自ドメイン」を一時的に記述すると、自分だけがさくら側のサイトを見られます。この状態で、リンク切れや画像の欠けを点検します。
WordPressはデータベース内にサイトURLを絶対パスで大量に保持しているため、内部データの不整合が起きることがあります。URLの一括置換が必要なときは Search Replace DB や wp-cli の search-replace を使い、シリアライズされたデータも壊さずに置換します。手作業でSQLを直接書き換えるとシリアライズ長がずれて表示が崩れるため避けてください。移行の基本は WordPressの引っ越し・移行の基本 もあわせてご覧ください。
独自SSL(HTTPS)の再設定
現サーバーで常時SSL化していたサイトは、移管先でSSL証明書を取り直します。証明書はサーバーごとに発行されるもので、移管では引き継がれません。
- さくらのコントロールパネルで、対象ドメインに無料SSL(Let’s Encrypt)を設定する
- ただし、証明書の発行にはDNSが実際にさくらを向いている必要がある場合が多い
- そのため、SSLの本設定はDNS切り替え後に行うのが基本の流れになる
ここが順番の悩みどころです。証明書発行にはドメインがそのサーバーを指していることが条件となるため、現実には「DNS切替 → 少し待つ → SSL発行 → HTTPS動作確認」という順で進めます。切替直後の短時間だけ証明書が未発行になり得る点は想定しておきます。SSL関連のエラー対処は SSL証明書エラーからの復旧 が参考になります。
DNS切り替え:タイミングと手順
いよいよ本番の切り替えです。ここで実際のアクセスがさくら側へ向きます。
切替の2つの方式
DNS切り替えには、大きく2通りあります。
- ネームサーバーごと切り替える方式:ドメイン業者側で、ネームサーバーをさくらのもの(
ns1.dns.ne.jpなど)に変更し、DNS管理をまるごとさくらに任せる - Aレコードだけ切り替える方式:DNS管理は今のまま、独自ドメインのAレコード(IPアドレス)だけをさくらのサーバーIPに向ける
メールも同じサーバーへ移すなら、ネームサーバーごと切り替える方式がシンプルです。メールは別サービスに残したい場合は、Aレコードだけを切り替え、MXレコードは触らない方式を選びます。
ダウンタイムを避ける切替の手順
止めずに切り替えるコツは、TTL(DNSキャッシュの保持時間)の事前調整です。
- 切替の2〜3日前に、現在のDNSでAレコードなどのTTLを短く(例:300秒)設定しておく
- データ移行・SSL準備をすべて完了させ、さくら側で表示が問題ないことをhostsファイル経由で確認する
- 切替当日、DNS(ネームサーバーまたはAレコード)をさくら向けに変更する
- TTLを短くしてあるため、世界中のキャッシュが数分〜数十分で新しい値に入れ替わっていく
- 反映を確認したら、TTLを通常値に戻す
TTLを事前に縮めるかどうかで、切り替わりの速さが大きく変わります。反映が進まないように見えても、多くはキャッシュが残っているだけです。慌てて設定を戻すと、かえって不安定になります。反映待ちの考え方は ネームサーバーが反映されないときの確認、ダウンタイムを最小化する全体設計は ダウンタイムを最小化するサーバー移管の進め方 もご覧ください。
メール移行の注意点
サーバー移管でトラブルが表面化しやすいのがメールです。
- ネームサーバーごと切り替えると、MXレコードもさくら向けになる。切替前にさくら側で全メールアドレスを作成しておかないと、切替直後にメールを受け取れない
- POP受信でサーバーにメールを残さない設定だと、切替のタイミング次第で「旧サーバーに届いた最後のメール」を取りこぼす可能性がある
- IMAP運用の場合、旧サーバー上のメールは新サーバーには自動で移らない。必要なメールは事前にローカル保存する
切替の前日までにメールアドレスをすべてさくら側に作り、パスワードや転送設定もそろえておきます。切替後は、各担当者のメールソフトで受信サーバー・送信サーバーの設定を新しいものに更新してもらいます。
切り替え後の動作確認チェックリスト
切替が反映されたら、次の項目を上から順に確認します。
- トップページがHTTPSで正しく表示されるか(鍵マークが出ているか)
- 内部の主要ページ・画像・お問い合わせフォームが正常か
- WordPress管理画面にログインでき、記事の投稿・編集ができるか
- 独自ドメインメールの送受信(受信・返信の両方)ができるか
- お問い合わせフォームからの通知メールが届くか
- リダイレクト設定(wwwあり/なし、http→https)が意図どおりか
- 検索エンジンからのアクセスやサイトマップに問題がないか
フォームの通知メールは、切替直後に見落とされがちです。テスト送信を1件行い、実際に届くことを必ず確認します。
失敗しやすいポイント
最後に、移管でつまずきやすい箇所をまとめます。
- 現サーバーの契約を早く解約しすぎて、元データを取り出せなくなる
- DNSを先に切り替えてしまい、データ移行前にアクセスが空のサーバーへ向く
wp-config.phpのデータベースホスト名をlocalhostのまま放置して接続エラーになる- SSLがDNS切替後にしか発行できないことを知らず、切替直後の警告表示に慌てる
- メールアドレスを切替前に作り忘れ、重要な連絡を取りこぼす
いずれも「順番」と「事前準備」で防げます。焦らず一つずつ進めれば、ほぼ無停止での移管も十分に実現できます。
まとめ
エックスサーバーからさくらインターネットへの移管は、(1)現サーバーの棚卸しとバックアップ、(2)さくら側の並行構築、(3)データ・SSL・メールの移行、(4)最後にDNS切り替え、という順番が要点です。TTLを事前に縮めておけば、切り替えのダウンタイムはほぼ気にならない水準まで抑えられます。
関連するWeb Gearサービスの案内
Web Gearでは、新潟の事業者さまのサーバー移管を、事前準備からDNS切り替え、切替後の動作確認まで一括でお引き受けしています。「自社で進めるのは不安」「本業が忙しくて手が回らない」という場合は、サーバー選定から移管作業までまるごと代行するWebザイルもご用意しています。まずはお気軽にご相談ください。